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「いいんですか? 俺なんかに情報屋をばらして」  赤信号で車は止まる。問いかける浅野を一瞥(いちべつ)し、黒田は真っ直ぐ前を見たまま口を開いた。 「あんただから教えたんだ。あんたは今まで見てきたどのキャリアとも違う。ただ出世だけできればいいってやつらとは違うってのがわかるんだ。だから教えた。あんたは信用できるからな」  どうしてそこまで言い切れるのか。黒田と顔を合わせたのは昨日が初めてだ。それなのに、絶対の信頼を寄せてくれているのがその面差しや声音からはっきりとわかる。  もしかして、浅野のことを噂以上に知っていたのだろうか? でも昨日の話だと、噂で知っていた程度だったように思う。  それに、浅野には特別目立つような大きな事件を解決したなんてことはない。だから所轄署の黒田が、浅野という人間をちゃんと知っているはずがないのだ。
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