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 校長室へと案内された浅野と黒田はそろって応接セットのソファーへと腰を下ろした。  大きな窓からは校庭が一望でき、部活動に励む生徒たちが見える。その声やボールを蹴る音を聞きながら待っていると、どこかへいっていた校長がお茶を淹れてくれた教師とともに戻ってきた。 「お待たせして申し訳ない。校長の前田です」 「こちらこそ突然お伺いしまして申し訳ありません。警視庁の浅野と申します。こちらが黒田です」  警察手帳を見せながら代表して浅野が挨拶をする。立ち上がった黒田は隣で会釈をし、まあどうぞと言われて再びソファーに腰かけた。 「それで、○○年度の卒業文集が見たいとか」  目の前に出されたお茶を示され黒田が早速口をつける。浅野は頭を下げただけで湯飲みには手を出さず、本題を切り出した。 「ええ。是非見せていただけないかと」  あらましを説明し三十一年前の文集が見たいという申し出に校長は快く応じてくれ、すぐさま持ってくるようにと指示が出された。
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