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だがそれは許されないのかもしれない。
複雑な思いを抱えたまま、その日は不機嫌な指揮官への報告もそこそこに帰途についた。
黒田と想いが通じあったというのに、浅野は重い足どりで誰もいないマンションへと一人帰ってくる。明日のことを考えると憂鬱だが、一年に一度のケジメの日でもあり、あいつと会える日でもある。
別に嫌なわけじゃない。ただ、苦しくなる自分をどうにもできないのだ。
こんな気持ちもいつかはなくなるのだろうか。いつか消えてなくなって、何もなかったように……。
――何を考えてるんだ俺は。あいつを忘れるなんてできるわけない。しちゃいけないんだ。傷つけた償いは、し続けていかなければいけない。
風呂に入って早々ベッドに潜り込む。決まって前日は寝つきが悪いが、一睡もできずとも平気だ。
照明のついていない部屋で、カーテンが開けっ放しの窓を見る。今日は月が綺麗で、星も一段と輝いていた。
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