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『春彦ー!』
「うおぅ!」
いきなり聞こえた声に驚いてマウスの左側のボタンを押してしまう。
『もうすぐお昼よー! 下りてきなさーい!』
「わ、分かった! もう下りるよ!」
いつものように階下から声を張り上げているのだろうおばあちゃ──祖母に、こちらも大声で返事する。
「本当に~?」
キィッとゆっくり扉が開いて、おばあちゃんの顔がひょっこりと──
「うおぅわぉう!?」
慌てて扉を閉めて鍵をかける。
「ななな、なんなんなん……」
「納戸?」
「違うっ!」
落ち着けボク。何もやましいことはしていなかったんだから、別に扉を閉めなくても良かったんだ。今から扉を開けておばあちゃんと面と向かって話そう。
「春彦もまだまだ若いわね~」
「なんか勘違いしてないおばあちゃん?」
絶対にあらぬ誤解を受けてる気がする!
「そうだ、夕飯はお赤飯を炊こうかしら」
「なんで? なんで炊くの? ねえ!」
「それじゃごゆっくり~」
「待って! 行かないでボクの話を聞いて!」
「コラ! 扉を開けちゃダメでしょ!」
「なんで? もう色々おかしいよ!」
ぬおぉ~! なぜ開かないんだ~! どういう力してるのおばあちゃん!
「とにかく、一段落したら下りてくるのよ~」
「ボクの話を聞けええええい!」
ボクの願い─もとい叫び空しく、おばあちゃんが扉の前から去っていく足音がする。「ウフフフフフフフ」なんか笑ってるし……。
「まったく……」
とにかく、一回PCを閉じて下に行こう。早くいかないと、おばあちゃんの勘違い(もうそう)が進行して取り返しのつかないことになってしまう。
そう思ってノートPCに目をやると──
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