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‐? Side‐
腕の中で、意識を飛ばした華奢な体に着ていたパーカーをかけ、抱き上げる。
意識を手放す寸前、小さな唇から紡がれたその言葉。
「…覚えて……?」
それか、無意識か。
正直、焦った。
抜け道を抜けて海へ向かおうとした時に聞こえた、複数の声、小さな悲鳴。
目が慣れるまで最初は冴えなかった視界も、
微かな灯りで映った押し倒されてる人物を捉えた瞬間、一気に晴れクリアになった。
事に及ぶ前で、本当に良かったとこの体を抱き寄せる。
最後に呻いた男を蹴り飛ばしてから、抜け道を辿って洞窟内から抜け出した。
ホテルに向かう途中、携帯を取り出し、1人の人物に電話をかける。
数回コールしたあと、そいつはでた。
「…よぉ、俺。」
報告内容は、洞窟内で伸びてる奴等の処分と、今回の事を周りに口外しない事。
そして、眠り姫の無事を。
「…近々、そっちに行く」
絢人は仕事が早いし、正確だ。その上機転も利く。
上手くやってくれるだろう。
ピ、と通話を切り月光に照らされる腕の中の男に視線を落とす。
あの日も、こんな月だった。
「……やっと、見つけた…」
‥──俺が、世界で唯一好んだ"紅"。
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