第1章

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月の見えない夜だった。 公園のベンチで、 一人見上げた空には星があるはずなのに真っ暗で、 座ったまま長い時を過ごした。 声をかけてきたのは、 コンビニの袋をぶら下げた、 高校の生徒会長だった。 老朽化で取り壊しが決まったアパートから立ち退きを迫られて、 途方に暮れていた。 理由は色々あるけれど、 とにかく行くところはない。 事情もよく聞かれないまま、 連れて来られた会長の家に上げてもらった。 古い一軒家だったが、 家人の気配はない。 「祖父さんが山奥で田舎暮らしを始めたんだ」「親爺は単身赴任で地方」と、 それだけ。 母親とか兄弟とかは? 聞こうとしたけれど結局どうでもよくなってしまった。 泊めてくれるというのだから、 余計な詮索をすることはないだろう。 一級上の先輩だから、 校内での繋がりは、 ほとんどない。 図書委員の仕事を任されているので、 放課後など、 図書資料室にいることが多い。 時折、 会長は一人で暇つぶしにやって来ていた。 締め切った部屋の窓には埃まみれのブラインド。 何度か共有した怠惰な行為。 いつも隣にいる副生徒会長に羨望を抱きながら、 少しの優越感も持っていた。 食卓に並べられたのは、 ちゃんとした煮込み料理で驚く。
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