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「ずいぶん正確な占いだと思いましたよ。それも不自然なくらい。バッチリ当たりましたね」
雲行きが怪しくなっている事くらい、気がついている。
危険だ。危険だ。
もう、後戻りは出来なくなった。
「それがどうした、たまたまだろう?」
マヘさんは、以前会った時とは別人のように、あざ笑っていた。
どうも気に食わないが。
「それが」
少し息を吐き、そっと、ゆっくり、振り返る。
「たまたま、じゃないんですよ」
それがーー、と話そうとした。
したが、
「そんな占い師の話なんぞ、何になるか? ハッハッハ。」
愉快そうに、意地悪そうに笑うマヘさん。
黒い雲は辺りを覆い尽くして行く。
「まさか時間稼ぎではあるまい。ここで時間を稼いだって、意味はないのだからな」
「そんなつもりはありませんよ」
風が、今度はうんと強いのが吹いた。雲が渦を巻いて、気味が悪い。風になびく黄色い葉の波が、気味が悪い。
「まず、確認です。マヘさん。」
風の威力で、思いっきりフードが飛んだ。すると今度は、忙しくまた風は静かに止んだ。
「”あなたとツツバヤが”、黒幕で間違いないんですね?」
小さく呟いたように言ったつもりだったが、怒りと苦しみが抑えられなかった。
「……」
「……」
マヘさんも、面食らったように固まっている。リュも、俯いて何か人間性のある弱点に堪える事しかできなかった。
「いやあ、驚いた!」
マヘさんが空を仰いで大声を出した。
その声に体が震え立つ。
憎たらしい太めの紳士が、笑う。
「まさか、まさかね! いやはや、驚いたよ。君みたいなオンボロな、家さえ捨てた貧乏人でもツツバヤ君を想ってくれてる人がいるなんて、彼女も幸せだなあ! 最初はそう見てたんだけどねえ! ハッハ、ここで裏切るとは! 最高だ! 実にドラマチックだ! 変な物でも食べたか!」
「あいにく、あなたが思っているように事は進んでいない様ですよ」
マヘさんは眉をひそめた。が、そうと思えば口の端を片方だけ上げて、余裕で笑っている。
「どう失敗しているのか、聞きたいもんだね。最初から行き当たりバッタリで進んで行った、世を修正するブロジェクトに間違いもなにも無いだろう? 間違いなんて有っても、二秒もあれば完全修正出来るのだよ」
嫌だ。本当は優しいと信じていたのに。
あの笑顔は、偽物だったのか。心の奥からは何も思っていなかったと。そうか。
それなら、
『人間じゃない』コイツには勝てる。
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