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しかし、目の前の『怪物』は、上から目線で笑う。口端を釣り上げて笑うだけだ。
「トブくん。君はもう、とっくに結論に辿り着いているはずだ。頭も悪く無いだろう? ここへ来るのは馬鹿な奴だ。わかるかね? いや、馬鹿ならもうここに着く前に、死んでいるかもな」
「まあ検討は付いていますよ」
いや、検討なんて、ツララ国をでる時には、何となくついていたんじゃないのか。ただ、疑いたく無かっただけか。
「話し合いを求めた所で、真相を知ったリュを生かしておく訳がない。きっと、勝手に作った変な儀式の生贄にでもする気でしょう」
「よく分かってるじゃないか。流石、『光の使者』。」
「その言い方は今後一切やめてください」
キッパリ言ったリュの言葉が引っ掛かったようで、マヘさんは顔を歪ませた。
「そこまでわかってるのか。まあいい、始末するだけだが」
上から睨まれている。
とても、冷たい。心から苦しくなりそうだ。
今のマヘさんは、優しいあの頃のマヘさんとは、とても遠い。
でもこれが、本来のマヘさんであるはずがない。
救わないといけない気がした。誰よりも、閉じこもっている人のような気が。
ツララ国で会う前だって、あんなに優しそうな、幸せそうな顔をしていた。
「……マヘさん」
悲しかった。誰を思わなくても、何故か悲しい。胃がキューッと縮まるように、泣きそうになる位、悔しい。悲しい。
後戻りは出来ない!!
ここで話をしなければ、一生、呪われた人々は救われない。
マヘさんもツツバヤも救えない。
それが、その重大な役割が辛かった。
「黄色い葉。この黄色い葉の数々。思うに、一本一本、呪いにかかった人達ですね」
「ほう」
首の体操でもしながら、さぞ当たり前のように答えるマヘさん。
「どこで知った」
「あなたが勝手に作った伝説のナンタラの勘ですよ」
それを聞いて、一瞬、鼻で笑う。
「それが『光の使者』だ。まあ、勘で全て解決出来る訳ではあるまい」
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