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背筋に、冷たいものが走った。
考えてもいなかった。ただ走って、ここへ来た。全て回答が見えたからだ。
幻想だったのか? なにもかもわかった気で居ただけ。
特に、自分が死ぬ事なんて、危機的状況だなんて、想定外だった。
迷って走ってたらここに着きました、なんて軽い決意と理由しかないリュは、
死なないから大丈夫なんて軽い保険ツキで戦いに来た。
馬鹿だ! 本当に馬鹿だ。
「信じられないような目でこっちを見ないでくれるかな? いいかね、君ごときに倒されるような、ヤワな者じゃないんだよ、私は」
ウネウネ、と尻尾のようにマヘさんの背後で、孔雀のように広がる木々。
「私はね、神なんだよ。はは、残念だったな、トブくん。ツツバヤの嫁入りを伝達してくれた後の君は用済みだよ、『光の使者』ァ!!!」
静電気で立つ髪のように、四方八方へ広がって威嚇する歯のない木々。
神サマ。そんな存在、認めたくなかった。認めるわけにはいかなかった。
いつでも、誰でも助けたい。ただ、平和な世界を永遠に見ていたい。
誰かと笑っていたかった。誰とでも。
それをぶち壊す、平和を『運』に変えてしまう神は嫌いだった。
神のために、みんなが幸せと自由を捨てるのを見ていられなかった。
神に祈って、自ら生贄になりますと身を投じたクラスの女の子。
神に捧げると言って、一週間分の食事を備え続けて餓死した隣のおじさん。
神に誇りを表す為に、幸福ですと言いながら倒れていった兵士。
リュは、それを見ていた。見ていたのに、結局助けられなかった。
協力してくれたツツバヤだけでも助けたかった。たった一人だけでも。
それでも、助けることは出来なかった。
結局、逃げだせたのはリュだけだ。何の意味もない。
神は、信じてくれている人々を裏切り、無視した。
幸福を与えるなんて、真っ赤な嘘だ。だって、神は、
「神は、世界を正す為の間引きをするだけなんだから」
マヘさんが神だ。こいつが。よりにもよってこんなやつが。
こんなに、元がいい人なやつが。
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