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悔しかった。
「……なかなか面白いやつだ。気に入った」
不意に、雲の流れが速く変わった。
シュッ。
一瞬、ほとんど無音で何が何だかわからない。そらがくろい。それだけ。
しかし、間も置かずに次の瞬間。
ズン!!
それは、光よりも早い攻撃だった。
「?!」
衝撃でものすごい音がする。
リュの、腕をかすめて、地面に突き刺さる。その場所に周りの砂が流れていった。
慌てて振り返り確認すると、マヘさんの背後から、身を乗り出すように幹の一本が突き刺さってきていた。砂から抜かれると、先端が鈍く光る。
ドリルのような、鋭い凶器だった。
「わざとはずしたのかよ」
「いいや、外してはいないね」
……?
肩が、暖かい。左肩がじんわり。
肩は粉をかぶっていた。その粉が暖かい。
びっくりした。
恐る恐る、その上、耳を触る。
耳は暖かかった。手には、黄緑色のお粉が。
「ま、まさかだとは思うけどな」
「その通りだ、君は人間では無いからな。察しのまま、そのサラサラゴワゴワな黄色っぽいものが君の血だよ」
リュの血は、黄緑の粉……。
「ショックを受けているなんて、君らしく無い。ああ、それと安心したまえ、いまのはちょっとした脅しだよ。すぐ殺してしまっては、『光の使者』にしてはあっさりしすぎだと思わんかね。我が最高の国の伝説が汚れる。」
白っぽい髪をかきあげ、耳まで裂けた口で嘲笑っている。
「いい子だったよ、ツツバヤは」
満足そうに斜めに頷く悪魔。
「その汚れた口でツツバヤの名前を言うな!!」
「黙って聞いてはくれないのかね」
その瞬間、マヘさんから飛び出した何本もの幹があっという間にリュの体をがっしりと捉えた。
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