植物の嫁 後編

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ぎしり、と。 感覚の抜けていたはずの胴体に痛みが走る。 「……ッ!!」 体が、割れるように痛い……ッ! ここは、別世界なんかではなかった。 現実だ。人が死ぬ。自分だって死ぬ。危険と隣り合わせな、現実そのものだった。 「やっとわかってくれたか。手間をかけさせるな、全く君は。最初からそう黙って話を聞いていればこんな苦痛もなかったというのに。」 そう言いながら皮肉に微笑むマヘさん。 もう目に浮かぶその姿は、苦痛のせいでぼやけて見えた。ピントが合わない。 鈍り始めた脳では『悪魔』と変換されていく。 「君が生まれる、ずっと前の話だ。君の言う故郷? まあどちらでもいいが。『あの』場所に、村が出来た。君がそんな無様な化け物様の姿になった『あの』場所だ。わかるかい? そこに生まれたのが可愛らしい小さな女の子だった。その子が」 「……ツツバヤ」 メキメキと体を締め付ける硬い木の幹。 うっ、痛い! 骨にまで食い込んでくる勢いだ。 「そうだ、彼女はもう400年以上前に生まれている。ところが変な病で、一般人よりも成長がゆっくりだから仕方ない。寿命が30倍程度違うだろう。」 想像もできない。 人生が30倍長いですなんて言われたところで、実感は……どんなに考えても沸かない。わからない。 「一般人が100年生きるとすれば、彼女はその30倍、3千年近く生きることとなる。人間が滅亡しているかもわからんがね」 人間が滅亡していてもおかしくない。 その時まで、彼女は生き続ける事ができる。 ツツバヤは、本当にそれを望んでーー? 「神の中でもエラーの一つだったよ。もともとは、あいつは20日以内に殺す予定だった。しかしな、少し実験してみる事にした。」 「な…………ツ!!」 ジッケン。まるで、ヒトとしても扱っていない。 ツツバヤは、その時からすでに、化け物のカテゴリだった。 「実験なんて、簡単なものだよ。一つ村を作らせ、そこに放った。始めは大人しかった彼女がその後300年、何をしたか知っているかね」 耳を塞ぎたかった。 目を閉じている。 ツツバヤが黒幕だ。痛いほどわかっている。 だからこそ、次の一文だけでも聞き逃したかった。
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