4人が本棚に入れています
本棚に追加
平らな砂はキラキラ輝きながら、谷の中へと流されていく。
流されていく。ん?
足元を覗いた。
砂が足の隙間を通って流れている。後ろを振り返ると、少し遠くにさっき来た不気味なジャングル。
そして正面に向き直る。
やはり谷底が見える。
結論。流されている。
谷に向かって。
「があああああああ!!!」
慌てて走るがもう遅い。
『綿よりも軽い』と思えるくらい電気なリュだ。流され始めると勢いは止まらない。
森が遠ざかって行くのを眺めている暇なんかない!
ダッシュ! 猛ダッシュ!
手足を精一杯振って、揺れ動く地を蹴る。
前に広がる白っぽい波が押し寄せてくる。
なんでこんな時に限って電気なんだろうと思う。
不自由ばかりだ!
「なななななな流されるーー!!!」
走る! 走る!
表面を走る!
助走があれば向こう側まで跳べるのだが、そんなことは叶わない。同じ理由で電気になって飛ぶことも出来ない。
気が付いた。
電気になれば、もしかしたらもしかしたら、跳べるかも?
そう思った矢先。一時停止した足は見事に砂にとられ、綺麗にコケて流されていった。
もがくが、どうにもならない。
さらば。さらば。
「ってぎゃああああああああ」
ギラギラ熱い太陽は眩しく、遠ざかっていく。
掴まる植物や縄なんて素敵なものはなく、宙で握った砂は指の間から抜け落ちていく。
吸い込まれていくのは谷底。足も体も浮いて、自由落下。
体を支えるものは、はっきり言って、無い。
当然、無い。
重力の行く方を恐る恐る振り返ると、そこはーーーー。
地面だった。
「ぐほああ?!」
頭から突っ込むところだった。
まさかこんなに浅いとは思わなかった。
てっきり、50メートルくらいの深さはあると思ったのだが、半分の半分も無かったのだ。
空を見ると、日が少し傾いていた。
「結構遠い所に来たみたい、だな……」
最初のコメントを投稿しよう!