暗い世界から悪夢へ……

6/7
前へ
/86ページ
次へ
空が見えるという事は、ここに太陽の光が当たっているという事。要するに明るく、視界が良好。 予想通り、目の前は平らになっていた。砂は相変わらず流れているが、さっきよりは流れが緩やかだ。 しかし、それでも流されるリュである。 今度は何の抵抗もなくゆっくりゆっくり流れる。 この先は、平らな地面だった。砂一面。かなり向こうまで続いている。 本当はテードまで帰りたいのだが、まずこの砂の流れから出る事さえ出来ないので、話にならない。森に戻れたとしても、この狂ったコンパスでどう身動きを取っていいのかもわからない。 今は流されてどこか近場の町か村に辿り着き、道を教わって最悪送って貰うのが賢明だろう。それまでは下手に動くと色々な箇所で危ない。 流されていく。 日よけになるものが無いので暑くなってきた。 頭がぼーっとする。 えーっと……リュは……だれだっけ? なんで、こんな………………すなの……砂漠みたいな。ん、森? 何があったかな。 あ、そうそう……ひとつ。 電気は……熱に弱いんだっけ。 電気は……。 「んあー、よく寝た! さあ起きろ、マーガレット!」 あれ? マーガレットが見当たらない。いつものパーカもなくなっている。 「マーガレット? 起きてるならいいけど、おいどこに行ったんだ……あ」 気が付いた。マーガレットどころかベッドもない。壁も天井も寝袋もない。 平原だ。 「?!」 しかし、昨日とは状況は違う。明らかに違う。 場所が違う。寝てしまってから一夜は越したはずだ。その夜の間もずっと流されていたはずだ、砂に。相当な距離を移動したのだろう。運賃タダのエスカレーターだ。 いやそれよりもコレだ。 青い空の晴天は昨日とはまるで変わらない陽気さ。 それと並行するように目の前に広がっているのは、なんと、 『黄色い草原』。 「っ……」 言葉が出ない。 目の前全て、くっきりと区切られたように広がっている。黄色い葉だけが痛々しく広がる草原。 いつか、この草を掻き分けて、三人で楽しく会話でもしながら歩いたような。 あれと、同じ色だ。全く同じ、同じ道を通ったのか疑うほど、同じ黄色……。 不気味だった。 この草原は、そもそも土がない。砂漠だ。 いや、砂漠と言うには涼しいが。明らかに土ではない。さらさらの砂だ。 遠くにもオアシスが見えない。 だから、おかしい。 以前とは違い、今だからこそはっきり断定する事ができた。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加