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空が見えるという事は、ここに太陽の光が当たっているという事。要するに明るく、視界が良好。
予想通り、目の前は平らになっていた。砂は相変わらず流れているが、さっきよりは流れが緩やかだ。
しかし、それでも流されるリュである。
今度は何の抵抗もなくゆっくりゆっくり流れる。
この先は、平らな地面だった。砂一面。かなり向こうまで続いている。
本当はテードまで帰りたいのだが、まずこの砂の流れから出る事さえ出来ないので、話にならない。森に戻れたとしても、この狂ったコンパスでどう身動きを取っていいのかもわからない。
今は流されてどこか近場の町か村に辿り着き、道を教わって最悪送って貰うのが賢明だろう。それまでは下手に動くと色々な箇所で危ない。
流されていく。
日よけになるものが無いので暑くなってきた。
頭がぼーっとする。
えーっと……リュは……だれだっけ?
なんで、こんな………………すなの……砂漠みたいな。ん、森? 何があったかな。
あ、そうそう……ひとつ。
電気は……熱に弱いんだっけ。
電気は……。
「んあー、よく寝た! さあ起きろ、マーガレット!」
あれ?
マーガレットが見当たらない。いつものパーカもなくなっている。
「マーガレット? 起きてるならいいけど、おいどこに行ったんだ……あ」
気が付いた。マーガレットどころかベッドもない。壁も天井も寝袋もない。
平原だ。
「?!」
しかし、昨日とは状況は違う。明らかに違う。
場所が違う。寝てしまってから一夜は越したはずだ。その夜の間もずっと流されていたはずだ、砂に。相当な距離を移動したのだろう。運賃タダのエスカレーターだ。
いやそれよりもコレだ。
青い空の晴天は昨日とはまるで変わらない陽気さ。
それと並行するように目の前に広がっているのは、なんと、
『黄色い草原』。
「っ……」
言葉が出ない。
目の前全て、くっきりと区切られたように広がっている。黄色い葉だけが痛々しく広がる草原。
いつか、この草を掻き分けて、三人で楽しく会話でもしながら歩いたような。
あれと、同じ色だ。全く同じ、同じ道を通ったのか疑うほど、同じ黄色……。
不気味だった。
この草原は、そもそも土がない。砂漠だ。
いや、砂漠と言うには涼しいが。明らかに土ではない。さらさらの砂だ。
遠くにもオアシスが見えない。
だから、おかしい。
以前とは違い、今だからこそはっきり断定する事ができた。
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