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「不自然だ。」
辺りを覆う真っ黄色の草。水のない草原。涼しい砂漠。
異様だ。夢の中ならありえない事もないが、現実にある状態は間違いなく異常だ。
ここに居ては危ないと。本能がそう告げている。
でも。
行くしかない。言い訳をすれば、帰り道がわからない。でも本当は、それ以上に、
『知りたい。』
知りたい。ツツバヤがどんな人なのか。ウェザブーチェンがなんなのか。一体、神なんて誰なのか。
どうなったっていい。この時ばかりは、そう思えた。
ずっと走ってみたかった。あの頃。草原を、ツツバヤと笑顔で太陽の光を浴びながら、飛び回るウサギを追いかけてみたかった。馬に乗せてあげたかった。空を飛ぶ鳥を、見失うまで追い続けてみたかった……。
まだ取り戻せるかもしれない。あの日が。
もう一度、彼女の心からの笑顔を見たい。
今度こそ正しく生きて、まっすぐした世界で幸せになってみたい。
リュは、友達を巻き込んでまで危険な扉を、また開けてしまった。
おとぎ話のような世界から抜け出すための、鍵が必要だ。
まだ、時が止まったままなら。
黄色い草原は、一本一本が風に身を任せ、大きく震える。
まだ。時が、止まっているなら。
目の前にして、もう一度深呼吸した。
あの日から進まない、「同じ」、アサとヒルとヨルの繰り返しなら?
記憶のなかで完全に封印していた。思い出したくなかっただけだ。
それだけのショックに負けていたら、神らしいどこかの誰かになんて勝てないだろ? 、頭のなかでは気取る、隅の自分。
出来るのは、自分だけ。今日終わらせる。テードに着いた時には決めていたんじゃなかったのか。情けない、今頃。
どっちにしろ、決めた!!
……それなら簡単な話だ。この道を通る事は、今のリュにはできない。
通りたくない。足が、心が嫌がっている。
通らないほうがいい。通ると、自分が壊れてしまいそうだ。
「……あなたがずっと顔だけ笑って居られると、どうも嫌な予感がするもんですね」
すっと。気味が悪い、生暖かい風がするする吹き通る。
右に左に、レモン色の光を僅かに跳ね返しながらミチクサは揺れる。
「………………………………この間まで、随分お世話になりました。礼を言わせてもらいますよ、マヘさん」
フードに照りつける太陽の光は、今日も眩し……『かった』。
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