暗い世界から悪夢へ……

7/7
前へ
/86ページ
次へ
「不自然だ。」 辺りを覆う真っ黄色の草。水のない草原。涼しい砂漠。 異様だ。夢の中ならありえない事もないが、現実にある状態は間違いなく異常だ。 ここに居ては危ないと。本能がそう告げている。 でも。 行くしかない。言い訳をすれば、帰り道がわからない。でも本当は、それ以上に、 『知りたい。』 知りたい。ツツバヤがどんな人なのか。ウェザブーチェンがなんなのか。一体、神なんて誰なのか。 どうなったっていい。この時ばかりは、そう思えた。 ずっと走ってみたかった。あの頃。草原を、ツツバヤと笑顔で太陽の光を浴びながら、飛び回るウサギを追いかけてみたかった。馬に乗せてあげたかった。空を飛ぶ鳥を、見失うまで追い続けてみたかった……。 まだ取り戻せるかもしれない。あの日が。 もう一度、彼女の心からの笑顔を見たい。 今度こそ正しく生きて、まっすぐした世界で幸せになってみたい。 リュは、友達を巻き込んでまで危険な扉を、また開けてしまった。 おとぎ話のような世界から抜け出すための、鍵が必要だ。 まだ、時が止まったままなら。 黄色い草原は、一本一本が風に身を任せ、大きく震える。 まだ。時が、止まっているなら。 目の前にして、もう一度深呼吸した。 あの日から進まない、「同じ」、アサとヒルとヨルの繰り返しなら? 記憶のなかで完全に封印していた。思い出したくなかっただけだ。 それだけのショックに負けていたら、神らしいどこかの誰かになんて勝てないだろ? 、頭のなかでは気取る、隅の自分。 出来るのは、自分だけ。今日終わらせる。テードに着いた時には決めていたんじゃなかったのか。情けない、今頃。 どっちにしろ、決めた!! ……それなら簡単な話だ。この道を通る事は、今のリュにはできない。 通りたくない。足が、心が嫌がっている。 通らないほうがいい。通ると、自分が壊れてしまいそうだ。 「……あなたがずっと顔だけ笑って居られると、どうも嫌な予感がするもんですね」 すっと。気味が悪い、生暖かい風がするする吹き通る。 右に左に、レモン色の光を僅かに跳ね返しながらミチクサは揺れる。 「………………………………この間まで、随分お世話になりました。礼を言わせてもらいますよ、マヘさん」 フードに照りつける太陽の光は、今日も眩し……『かった』。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加