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空を仰いだ。
空気が美味しかった。澄んでいた。
太陽の光が眩しかった。心地いい。
地面にはフサフサの草原が広大に丘を築き、まるで馬が走るように自由な風が駆け抜けていく。
暖かかった。自然が優しかった。
ふんわりと、大気が包んでいるようだった。
そこに生き物が根付く。
新しい命が生まれる。
自然はなんて、美しくてたくましくて、誇りがあるのだろう。自分もその一員に入れたら、どれだけ嬉しいだろうか。
そう、憧れた。憧れていた。むしろ、風を感じない日はなかった。
風と会話して、自然を知った気になって、それだけで満足できるだけの『幸せ』があった。
その度に、大切な人に見せたいと、どこか恋しく切なくなりそうな、守りたい風景だった。
「……いつから気がついていたのかね、トブくん」
リケン・マヘさん。その人は、いつも笑顔が優しそうな、太陽のような人だった。
本当は認めたくない。マヘさんは色々な所でリュ達を助けてくれた。だから、疑いたくない。マーガレットも、マヘさんの娘さんビオラ・マヘさんと仲良しだ。
だからこそだ。だからこそ、許せないものがある。
大きく息を吸い、吐いた。相変わらずあまり温度が感じられない。
しかし、寒気はしたのが不思議だった。
「いつから気がついていたか、ですか。そうですね、気がついたのは今日ですね」
「ほう」
「急に、胡散臭い占い師さんに止められたんですよ。それから、今日は不思議な運が出ていると聞きましたね。不思議すぎる見たことない運の流れやらと言われて、特別でタダで見てもらいましたよ。なんでも、『恩返しを出来ていない信頼していた人』と何かあると。」
風がまた冷たくなった。
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