第8話 悪代官の惑星

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   そう言われても釈然としないノヴァルナである。 「もひとつわかんねーな。なんかいい例えはねえのか?」 「そう? じゃあ皇国が使ってる銀河標準時を考えてみて」 「銀河標準時か?」 「銀河標準時は皇都惑星キヨウの一年が365日、一日が24時間である事から、皇国の所属惑星の公転を三百六十五等分、自転を二十四等分して、年数や日数に誤差が出ないようにしてるでしょ?」 「ああ。惑星によって一年400日だったり、一日20時間だったりしたら、いろいろと面倒だからな」 「だけど、それは“私達の都合で作った時間”だって分かるでしょ。同じ一時間でも惑星によって実際の長さは違うわよね?」 「なるほど…そうだな。オ・ワーリ内で単純に考えても、俺が住んでるラゴンより一時間が長い星もありゃあ、短い星もある。実際、イル・ワークラン家の惑星ラゴルの一時間は、ラゴン時間の68分だ」 「そうよ。“私達の都合で作った時間”は、私達がこのシグシーマ銀河で活動するために作り上げた時間系であって、絶対時間というわけじゃない…そもそも、絶対時間系っていうもの自体が存在しているのかわからないけどね。そして私達の銀河皇国―――恒星間文明は、DFドライヴ航法で移動する事で作られた世界。いわばDFドライヴの時間系の世界なのよ。だけども『トランス・リープ』は別の時間系の航法だから、タイムスリップと似た現象が起きたのよ」 「似た現象って事は、やっぱ本物のタイムスリップじゃねえってワケだな?」 「ええ。おそらく、もし『トランス・リープ』を完全に実用化して、私達の世界が『トランス・リープ』の時間系に移行する時が来たら、今回のような事は起きなくなるはずよ」 「問題はそこだぜ」 「ええ、わかってるわ。あなたの言ってる、あの未開惑星に転移した理由と、貨物宇宙船で脱出する時に見た、何かの巨大施設の関連性を疑ってるのね」  ノヴァルナが指摘したのは、『トランス・リープ』による『ナグァルラワン暗黒星団域』のブラックホールからあの惑星への転移に、意図的なものを感じた事である。それは惑星から離れる時に貨物宇宙船の窓から見た、円形をした青銀色の超巨大な謎の施設の存在で、ノヴァルナとノアの共通認識となっていた。高さが数千メートルはあると思われた、アンテナのような塔が幾つも立つその施設は、何かの送受信装置に思える。  
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