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詫びるルキナにケーシーは「いや、感謝する」と頭を下げた。然るべき医療機関で手術しなければ、どのみち助からないのはケーシー達も充分理解しているはずだ。そのケーシーに、カールセンはあえて事務的な口調で告げる。
「二日だけだ…ガレージの奥に隠れて、明後日の夜には出て行ってくれ」
それはつまり、二日間はエンダー夫妻の家で、このレジスタンスの兵士達をかくまうという話である。だがそれでも、かなりの危険を冒す事に違いないらしく、カールセンもルキナも苦衷の表情を浮かべていた。
「わかった。済まない、カールセン、ルキナ…恩に着る」
硬い表情で礼を言うケーシーに軽く頷き、カールセンはノヴァルナとノアに振り向く。
「ノバック、ノア。これはおまえさん達には関係ない話だ。何も見聞きしなかった事にして、今夜はもう遅いから帰ってくれ」
するとノヴァルナは、あっさりとした声で「わかった」と応じた。ノアは何か言いたそうだったが、ノヴァルナの“帰るぞ”と促す視線に口をつぐむ。そこにさらにカールセンが、指示を付け加えた。
「それと明日、明後日は臨時休業にする。ウチにも来るな。ルキナに食材を分けさせるから、食事はそっちで用意してくれ」
「ああ、そうするぜ」とノヴァルナ。
「じゃ、二人ともリビングで少し待ってて、すぐに食材を用意するから」
ルキナは静かに告げると、先に住居へと向かった。
「…あなたにしては随分、簡単に引き下がったのね」
自分達の住まいに戻ったノアは、キッチンでルキナが用意してくれた食材を並べながら、リビングのノヴァルナに話し掛けた。
「カールセンの言う通り、俺達には関係ねえ話だからな」
口ではさして興味もなさそうに言うノヴァルナだが、その目の光には厳しいものがある。
「あのご夫婦が、私達に隠し事をしていたのを、怒ってたりする?」とノア。
「ハハハ…まさか。隠し事ってんなら、俺達の隠し事の方がでけえからな。むしろデカ過ぎて、信用されねえレベルだろうぜ」
冗談めかして応えたノヴァルナだが、そこから口調に真剣さを帯びさせた。
「裏事情はどうであれ、あの夫婦は信用出来る。だが問題はレジスタンスだ。どの程度の規模の組織かは知らねえが、少なくとも今は俺達が関わらねえ方がいい」
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