856人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだぁ、ありゃあ!?」
山腹を斜めに降りて来る超巨大なムカデのロボットに、どこか間の抜けたような声を上げるノヴァルナだったが、その眼は雷光のような輝きが厳しい。
「あれがオーク=オーガーの機動城…『センティピダス』だ」
カールセンの言葉に、機動城『センティピダス』はタペトスの町を見下ろす位置で、岩肌にへばりついて停止した。と同時に、長い胴体の中から無数の二連装砲塔が姿を現し、一斉に砲口をタペトスの町に向ける。
すると胴体後方の四つの体節に一個ずつある、丸いドームが分離して宙に浮き上がった。金属的な作動音が、反重力推進である事を示している。半球上のドームは直径が10メートルほど、そしてその下側には六本の長い脚が折り畳まれていた。脚は機体が町に飛来して来るにつれ、下へと伸びて、やがては吊り下げられた蛸のような姿になる。
4機はタペトスの町を四方から囲むようにして、脚を開きながら着陸を始めた。それに合わせて、『センティピダス』の胴体下部の六か所でハッチが開き、隣町のサンクェイでノヴァルナ達も見掛けた、例の多脚戦車モドキが20機以上も吐き出される。
位置に着いた4機は地面近くで反重力推進を切って着地した。ズズン!と地面が揺れ、周囲の民家の屋根に積もった雪が一斉に滑り落ちる。六本の脚が関節部で一旦沈み、リニアダンパーが着地の衝撃を緩和して、機体を安定させた。
ドーム部を360度回転する大口径ビーム砲と、頭頂部を囲むように設けられた小型汎用ミサイルの8基のVLS(垂直発射装置)に、4基の円盤型のエネルギーシールド発生機。機体下部の三箇所に睨みを利かせるガトリング砲―――降下して来たのは間違いなく、正規軍が使用する本物の多脚式重戦車であった。例の多脚戦車モドキと同じく、濃淡二種のグレーとライトブルーの積雪地迷彩塗装が施され、機体正面には星に巻き付く紫のムカデが描かれている。
火力的には1機だけでも、タペトスの町程度ならば壊滅させられる多脚式重戦車が4機。そこにさらに『センティピダス』から発進し、山腹を駆け下りた小型の多脚戦車モドキが、24輌も町に侵入して来た。
「ノバック!」と強い口調で呼び掛け、カールセンは続ける。
「ノアを連れて、俺達から離れてろ!」
それはつまり、自分達とは無関係を装え、というカールセンの指示だった。
最初のコメントを投稿しよう!