第8話 悪代官の惑星

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   カールセンの言葉に対し、ノヴァルナは何かを言い返そうとする。ところがその時には早くも通りの両側に、町に侵入した多脚戦車モドキが3輌ずつ、蜘蛛のような姿を現した。四人乗りのオープンデッキの後部座席が下に開き、ワイヤーに吊るされた兵士が二人ずつ降りて来る。ワイヤーは地上に着くと同時に切り離され、兵士はサブマシンガン型のブラスターを構えて駆けだした。あのサンクェイの街で戦闘したならず者達より、多少組織立って動きがいい。おそらくオーク=オーガーの元で働く、傭兵の類いだろう。  機動城『センティピダス』と4機の重多脚戦車、そして通りの両側を封鎖した多脚戦車モドキと傭兵達の前に、住民達はなすすべもなく通りの中央で身をすくませた。  すると『センティピダス』を背後にして正面に位置を取る、重多脚戦車の機体上部が開き、六角形をしたベースに手摺が付いただけの、反重力モジュールが舞い上がる。高速で接近するそのモジュールには、巨体のピーグル星人と四人の人間が乗っていた。ノヴァルナの周囲の住民が、小声で「オーガーだ…」「オーク=オーガーだ…」と怯えたように言う。ノヴァルナは反重力モジュールに乗っているのが、この惑星アデロンの支配者、オーク=オーガーだと判断した。  モジュールが近付くにつれ、オーク=オーガーの様子が鮮明になる。二メートルを超えるであろう巨体は、腹が大きく突き出ており、顔つきは同じピーグル星人に比べて豚と言うより、イノシシに近いいかめしさだった。  赤胴色の軽装甲服の上には、何かの動物の毛皮と思われる、白地に黒い斑点がついたフード付きマントを羽織っており、赤らんだ顔には一面に幾何学的な刺青が彫られている。そして丸太のように太い右腕には、持ち手の柄に大きな鎖をつけた、長さが70センチほどで太さは8センチほどもある、六角の黒い金属棍を握っていた。  そのオーク=オーガーの隣には、ノヴァルナには見慣れない、カーキ色の軍装をしたヒト種の男が立っている。年齢は四十代ぐらいであろうか。  あとの三人もヒト種だが、うち二人は汚れのない冬用迷彩服を着用しており、傭兵ではなくどこかの正規兵のようだ。もう一人のヒト種はオーガー一味のならず者らしく、古びたボディアーマー姿で、この反重力モジュールを操作していた。  
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