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「負け犬の反逆者共はサンクェイから撤退した。そして逃げ遅れた奴等のリーダーの一人が、このタペトスの町に向かった、というタレコミがあった。それが事実なら、そいつらはこの町にもう着いているはずだ。反逆者共は根絶やしにせなばならん!」
オーク=オーガーの話でノヴァルナは、自分達が離れたあとのサンクェイで何が起きたか、おおよそ想像する事が出来た。昨日カールセンのところに転がり込んで来た連中が、そのレジスタンスの敗残兵だ。オーク=オーガーのあの機動城とやらと、正規の重多脚戦車4機が現れたとしたら、レジスタンスに勝ち目はないとすぐに知れる。なぜならあれだけの戦力と対等に戦えるならば、それはもう組織的にレジスタンスと呼ばれる範疇ではなく、一つの“軍団”だからだ。
それはそうと………
ノヴァルナは内心、状況はすでに全てが手詰まりだと思った。
“オーク=オーガー本人が今の話を告げに、真っ直ぐこの通りに来たって事は、ここにエンダー夫婦がいて、レジスタンスをかくまってるのを、すでに知ってるからだ”
ノヴァルナの懸念通り、さらに二十名ほどの傭兵が路地のあちこちから現れる。傭兵達は、ノヴァルナ達のいる住民の一団と離れ、自宅の前に立つエンダー夫婦を遠巻きに包囲した。
それに合わせてオーク=オーガー達の乗る反重力モジュールが、おもむろに路上へ着地する。ズシリと足音がしそうな重々しさで、路上に降り立ったオーク=オーガーは、金属棍を左手にバチリと鳴らした。ブフゥー!と吹き出す荒い鼻息が、寒気に白い雲を作る。
「………」
妻のルキナを庇うようにして、オーク=オーガー達を睨むカールセン。するとオーガーと共に反重力モジュールに乗っていた、軍装姿の男が進み出て告げた。
「久しいな、カールセン…二年ぶりか?」
その男の言葉で、カールセンは表情が一段と険しくなる。
「レブゼブ=ハディール…貴様と話す事はない」
軍装姿の男はレブゼブ=ハディールという名前のようであった。そしてカールセンと、何か良からぬ因縁があるらしい。レブゼブは口元を歪め、嘲るような目で言葉を返す。
「随分な言い草だな。これでも俺はお前の元上司だぞ」
それを聞いたカールセンの、返す言葉の語気が強まる。
「自分の利益のために部下達を切り捨てた男が、今更上司面とは恐れ入る!」
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