第8話 悪代官の惑星

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   カールセンの罵倒にも、レブゼブは勝ち誇るような笑みを返して言い放った。 「なんとでもほざけ。時勢を読めなかったお前達が、間抜けだったのだ」  そこにオーク=オーガーが野太い声で割って入る。 「ハディールさんよ! それより本題だ」  そう言って、オーガーの酷薄そうな目がカールセンを睨む。 「おい、エンダー! アッシナ家の武官だった事と戦場での功績で、多少の事は今まで大目に見てやっていたが、レジスタンス共をかくまって直接関わった以上は、もう終わりだ! 覚悟しやがれ!」 「………」  無言で睨み返すカールセン。するとオーガーは右手の黒い金属棍を振って合図した。それに応じて、部下の傭兵の一団が、カールセンとルキナの背後で二人の店舗兼自宅のドアを蹴破り、中へ突入して行く。悲愴な面持ちで振り返るルキナの肩を、カールセンの手が抱き支えた。  その直後、自動車整備工場となっているカールセンのガレージのシャッターが、轟音と共に突き破られ、中からランドクルーザーが飛び出して来た。サンクェイの街でノヴァルナとノアを助けた、カールセンのランドクルーザーである。  住民達が驚きの声を上げ、オーガーの兵士達が身をすくめる。ランドクルーザーはガレージから路面に出ると、いきなりハンドルを切ってほとんど直角に曲がった。それを見てカールセンはルキナの肩を抱いたままで身を翻す。  ランドクルーザーは、そのカールセンとルキナの脇を急加速してすり抜け、オーガーとレブゼブ達に向け突進した。ノヴァルナとノアが一緒にいる住民達が怯えて逃げ散り、彼等を取り囲む兵士は咄嗟に銃を構えようとして、三人が跳ね飛ばされる。その光景にオーク=オーガーは「ぶがッ!!」と鼻を鳴らして、表情を凍り付かせた。  とその時、レブゼブを護衛する冬用迷彩の装甲服を着た二人の兵士が、擲弾筒付きのライフルを素早く構える。ゴーグルと一体化したヘルメットで表情は掴めないが、兵士は落ち着いた様子で引き金を絞った。  ライフルの銃身の下部にある擲弾筒が煙を吐き、小型のロケット弾が発射される。それはランドクルーザーの正面に命中し、ボンネットから火を噴いて車体を跳ね上げた。レブゼブを護衛する二人はその沈着な身のこなしから見て、ノヴァルナにとっての『ホロウシュ』―――親衛隊のようなものらしい。  
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