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ロケット弾を受けて車体を跳ね上げたランドクルーザーは、もんどりうって横転し、護衛兵の直前で停止した。その間に、顔を引き攣らせたオーク=オーガーとレブゼブ=ハディールは、十メートルほども後方に逃げ去っている。
車が停止すると、周囲の兵士達が車体に群がって来た。身構えて、銃口を一斉にヒビの入ったフロントガラスに向ける。だが車内はもぬけの殻で、誰も乗ってはいない。
「誰もいねえぞ!!」兵士の一人が大声で告げる。
それを聞いて二人の護衛兵は、足早にカールセンとルキナの元に歩み寄ると、一人がルキナをカールセンから引きはがし、雪の残る路上に荒々しく突き飛ばした。
「きゃああっ!」
「ルキナ!」
妻の名を呼んだカールセンが差し伸べる腕を、ルキナを突き飛ばした護衛兵がねじ上げる。そしてもう一人の護衛兵が、カールセンの反対側の手から何かの装置を奪い取った。小さなレバーのついたそれは、コントローラーの一種に思える。
護衛兵はカールセンを連行して、そのコントローラーをレブゼブに手渡した。傍らのオーク=オーガーも、顔をしかめてそれを見る。
「これは…我等アッシナ軍のスパイプローブ用コントローラー。これであの車を、自動運転出来るように改造していたのか」
その直後、エンダー夫妻の家に突入していた兵士達が、ランドクルーザーの突破でシャッターが壊れたガレージから、次々に姿を現してオーガーに告げた。
「オーガー様! 家の中には、コイツしかいませんでしたぜ!」
そう言った兵士の後に続いて出て来たのは、例の重傷を負ったレジスタンスの男である。両脇からオーガーの傭兵に担がれて、脚は引きずられるままだ。
「ぬッ! カールセン、今の騒ぎで時間稼ぎをしたな!!??」
レブゼブが鋭く言い放つと、隣でオーガーが怒声を上げた。
「家の周囲を探せ! 逃がすんじゃねえ!!」
そのオーガーとレブゼブの元に、重傷のレジスタンス兵が連れて来られる。昨日一応の治療は受けたとは言え、深刻な状況である事に変わりなく、息も絶え絶えであった。しかしレブゼブは容赦なく詰問する。
「ユノーは!? 貴様たちのリーダーはどこに行った!?」
「知らん…」
重傷の男は呻くように言う。
「我々から盗んだ解除キーは、ユノーが持っているのか!?」
「………」
レブゼブのさらなる詰問に、男は口をつぐむ。
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