【Penetrate】

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「御陵先生、この生徒が一年SAクラスの黒川奈央です」 「黒川です。お世話になります」 聖学の裏門のすぐ隣にある建物が寮の管理棟と事務棟。翌日の放課後、部活を休んだ俺は山せんと入寮手続きをするために事務棟にある庶務係に来ていた。 「黒川くん、大変だったね」 「あ、はい、……ですね」 「僕が“御陵寮”の寮監督をしている御陵です。これからよろしくね」 初めて見る先生だなと思いながら、小さく頷いた。 「えっと……、あれ、名刺入れは――」 それにしても御陵先生は小さい。細身のスーツのポケットを探る先生のつむじを見下ろしながら160あるのかな、なんて考える。ほっそりとした身体は肩幅が狭く女性的で顔立ちもどこか幼い。俺の片手で掴めそうな小さな顔。思わず手を伸ばして確かめたくなる。柔らかくその輪郭を撫でる色素の薄い髪が印象的だった。 「――あった。お待たせ、黒川くん」 「あ、いや、全然です」 手触りの良さそうな髪が揺れる。探し物が見つかったのか、革の名刺入れを手にした御陵先生が人懐っこい笑顔で俺を見上げる。首を傾けて「どうかした?」と訊かれたから曖昧に笑っておいた。
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