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人混みを抜け、漸く帰路を歩いていると。突如赤い飛沫が空から降り注ぐ、軈て落ちてきた赤黒くなったモノ。
ベチャッ
不快感極まり無い音を立て、人間の頭部らしき物が足元に落ちた。
目玉は大きく見開かれ、最早元型を止めていない。
「きゃああああああ!」
「叶、落ち着いて。ゲームはもう始まったんだよ?」
彼女は、小さな体を小刻み震えさせながら。後に空を浮かぶ人影を視やる、其れは巨大な鎌を掲げていた。
青年だろうか、その人物は此方を見付けるや否や鎌を降り下ろす体勢に入る。
キイィイインッ
だが、突然辺りから耳をつんざくような音波のようなものが其を阻止した。
何時までも来ない痛みに、恐る恐る私は眼を開ける。
其所には、巨大な鎌を片手で抑える一人の女の子が目に映っていた。
「はぁああああっ!」
ドシャッ
地面に陥没し、沈みながらもがく青年を余所に少女は余裕の表情を浮かべて笑う。
赤い髪に、泥が少し跳ねたものの彼女は気にする様子も無いのか寧ろ楽しんでいた。
その右手には、灰色の蛇が巻き付いている。メデューサを連想させ、緊迫の余り思わず唾を飲む。
暗い夜道、其所に月明かりが差し込むと少女は光に照らされた。
後ろに結い上げられた、綺麗な赤髪は風によって靡き。同時に隠れていた金色の瞳がちらりと見える、まるで其れはフェニックスのようだ。
そう思った途端、彼女の背後に全長二メートルはある巨鳥が姿を現す。
「あっ、良かった。参加者だよね、私一人で敵一杯で怖かったよ。うわあああん!」
「大丈夫?でも私も敵って事にならないのかな……」
だが、出来れば物騒な真似はしたくはない。ルールは確か、相手のパートナーを奪えば勝ち。
私は罪悪感に苛まれながら、少女の腕に巻き付いていた蛇に触れる。
どくんっ、だが心臓が息も出来ない迄に締め付けられて私はその場に踞った。
可笑しい、敵と遭遇してはいない筈だ。なら考えられるのは、彼女のスキルが原因と言う事になる。
視ると、女の子は不敵に微笑していた。
「……っ、まさか毒?」
「当たり、お姉ちゃん死んでよ。勝利を掴むのは私よ、ねっ。イヴ」
「えぇ、あなたこそが相応しいわ。01、決着は着いたも同然ね?」
まだ、名前すら着けていない。責めて彼女に名を与えたかったのに、もう決めていた。
あなたの名前は、ユメ。
「うっ、ユメ……」
「其れが私の名前なら、浄化の光!」
ユメは呪文を唱える。
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