山口家の双子

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誰かが私の名前を呼んだような気がした。 「二(ツグ)。」 ...ほら、あれは紛れもない私の名前だよ。 「二、起きろ。」 定期的に私の名前を呼ぶ聞き慣れた声。 起きろ、という一言に 私は今寝ているのだと気付かされた。 きっとこの声は、...。 きっと目を開けると見えるのは、...。 そういった期待にゆっくり瞼を動かすと 視界に入ったのは見慣れた私の顔.... ...ではなく、双子の兄の一(ハジメ)君の顔。 やっぱり一君だ。 正月の日にちが変わる直前に生まれたから一(ハジメ) 日にちが変わって二日に生まれたから二(ツグ)、と なんともふざけた名前の付け方だな、とは思うけど お父さんもイロイロ考えて付けたんでしょうね。 普通は後に生まれた方が兄とか姉とかになるんだろうけど 私は体が異様に小さかったらしく、妹と見なされたらしい。 惜しい。姉面できたかも知れないのに。 まあ、双子の分際でしたら 里子に出さないで両方育ててくれただけでも感謝感謝、って立場なんだろうな。 双子が両方揃って同じ家で育つって事自体がもはや贅沢なんだし。 とりあえず良い親に巡り会えた事は確かなようだ。
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