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人間が恋をするように、宇宙の星々も、引力に引き合うように、恋をしていた。これは、そんな宇宙の片隅の太陽系のお話。
太陽系は、太陽を中心に惑星が公転し、一つの集団を作っていた。
太陽は中心であり、太陽なくして、この太陽系は成り立たない。
そんな世界で太陽は、自分の役割を誇りに思い、そして、自惚れていた。
太陽系という世界は自分を中心に回っているのだから、それに属するものは、自分の思い通りになって当然なのだと思っているようであった。
そして、この太陽系には、とても美しい人気の惑星があった。人気というのは、恋愛対象として、という意味である。自身が、釣り合わないと思うような星たちは、遠くからその惑星を眺めていた。
他の惑星にはない、彩りを持ったその惑星は、『地球』と呼ばれていた。
青く美しい海と、豊かな陸地に緑が広がるその惑星は、コントラストが絶妙で、見目麗しい。また、地球自身も、自らに住まう民を分け隔てなく愛し、慈しみ、様々な恵みを与えていた。
そんな優しい地球に、太陽系の星たちは、時に友達として、時に恋人として、近づきたい、仲良くしたいと思っていた。
その中には、自惚れやの太陽も含まれていたため、ほとんどの星たちは、その思いがあっても、直接口にすることはなかった。
その思いを口にしてしまえば、太陽の機嫌を損ねてしまうという気持ちがあったからだ。
太陽の機嫌を損ねて、惑星たちの公転を拒否されてしまえば、太陽系の秩序は崩れ、崩壊してしまう。そうなれば、太陽自体も被害を受けることにはなるだろうが、太陽にそんな思慮深さがあるわけがなかった。
そんな中、太陽に対して、反発している星があった。
地球の衛星である月である。月は、地球の近くで、ずっとずっとその行いを見てきた。
どの星にも分け隔てなく接し、地球に住むどの民に対しても、分け隔てなく愛した。
自分が目を背けたくなるような醜い形の民にさえ、自分が恵みを与えたくないような残酷な生態系を持つ民にさえ、地球は平等だった。
そんな清らかな地球に、自分が世界の中心であり、敬われて当然と自惚れている太陽は勿体ないと感じていた。
月の中で、地球は神格化され、敬慕のような念を抱かれていたのである。
だが、地球にとって、月の思いは重たく、また、太陽の思いも一方的であり嬉しくもなんともなかった。地球は、ただただ迷惑していたのである。
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