P×LOVE

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太陽は、暇さえあれば地球にアプローチをかけていた。 それは、回りの星たちにとって、見慣れたというよりも見飽きた光景だったので、まるでそれが起こっていないことであるかのように振る舞っていた。 アプローチをかけ始めた頃は、好奇の目や興味津々な目を向け、ひそひそと噂話をするような星たちもあったのに、今ではそんな星はどこにもなかった。 自惚れやで、目立ちたがりの太陽にとっては、それすらおもしろくない。もっと自分に注目してほしかった。 「地球をもっと青く輝かせることができるのは俺だけだろ。付き合おう。返事は言わなくても分かってるから」 それを聞いて、聞こえないように地球は溜め息をつく。 もう太陽の中では、自分の返事は「ええ、嬉しいわ」ということになってるのだろうということは、考えなくても分かっている。 だけど、地球には他に思いを寄せる相手がいる。その対象が太陽になることは、絶対にない。 「地球は嫌がってるよ。大体、君と地球が釣り合うわけないじゃないか」 そして、横から口を出してくる月も、地球にとっては悩みの種であった。 太陽を嗜めたくても、そこから絶対にケンカに発展してしまう。 叶うのなら、月には黙っていてほしかった。 それなのに、いつも太陽と張り合うように口を出してくる。 人間とは違い、とても長い寿命を持つ星たち。 そんな長い寿命の中、毎日のように繰り返される出来事に辟易していた地球は、ある日、ついに言ってしまう。 「いい加減にして。私はあなたたちの『物』じゃないの。私にとっては、太陽も月も欠けては困るものだわ。それなのに、事あるごとにケンカして!考えてもないみたいだけど、私にだって、私の気持ちがあるんだからっ!」 それは、地球が長い間溜め込んでいた思いである。言うに言えなかった思いを全部吐き出すように捲し立てているものだから、普段では考えられないような迫力があった。 「もう、知らない。私、二人が仲良くなるまで、絶対に誰とも喋らないわ」 そこからは大変な騒ぎだった。 いろいろな星たちが入れ替わり立ち替わり話しかけたり、励ましたり、慰めたりしていたのだが、地球は本当に全ての星を無視した。無視し続けた。 地球は自分が甘い態度を取れば、太陽も月もまた調子に乗ってしまうと思ったのだ。 実際、無視されることに一番傷ついていたのは、太陽と月である。特に太陽は酷かった。
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