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月は、時間が経つと共に、自分がいかに地球の気持ちになって考えず、ヒーロー気取りで助けに入っていたか、気づいた。
太陽に対して、きちんとした態度を示す機会を自分が奪っていたのだ。
太陽と話をしようにも、自分が横から口出しをして、そこからはケンカをするというのはいつものことで、言い合いを始めると、誰が止めてくれても聞こえていなかった。
そんな自分を振り返り反省した月。
だけど、太陽はずっと落ち込んだまま。
太陽は自分勝手ではあるけれど、地球が純粋に好きだっただけだ。
自惚れが強くて勘違いして、でもそれを正してくれる人がいないかったから、ますます自惚れて傲慢になっていったのだ。
(ムカつくところはあったけど、君はかわいそうなヤツなんだろうね)
月はそう思うと、自分から歩み寄るようになった。
時々太陽に近寄っては、地球から太陽を隠して話しかけるようにしたのだ。
これは地球の民の一部から『日食』と呼ばれるようになり、歴史上何度も観測されている。
「太陽、元気を出すんだ。僕らが仲良くすれば、地球は許してくれるよ。本来地球は優しいんだから」
そんな言葉をかけ続け、長い長い年月をかけて、太陽は少しずつ答えるようになっていった。
「ああ」や「分かってる」といった短い言葉ではあったが、少しずつ答える回数は増えてゆく。
十回に一回が、八回に一回に。八回に一回が六回に一回に。というように、徐々にその回数を増やしていった。
最初月が話しかけてきたとき、太陽は(どうせ今だけだろ)と思っていた。
口にこそしなかったが、今までケンカばかりしてきた相手だったため、信用できなかったのだ。
しかし、予想に反して月はずっと話しかけて、励ましてくれた。正直嬉しかった。
回りの星たちは、太陽が落ち込んでも、自業自得と言って、落ち込む太陽を迷惑がっていたからだ。
太陽もまだ落ち込んではいたが、気分のいいときは、太陽から月に寄っていくこともあった。
それも、地球の民の一部からは『月食』と呼ばれ、観測されるようになった。
地球はというと、全ての星を無視し続けた結果信用を失っていたが、それでも構わなかった。
信用は時間をかければ取り戻せるけど、大切なことを教えることは自分にしかできないことだから。
遠くから、太陽と月を優しく見つめながら、(もっと近づいて親友と呼べるようになったら、話しかけよう)と思うのだった。
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