2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「何も入ってない」
DVDの中身は空だったのだ。
――それから数日、二人はDVDの謎を突き止めるため動き出した。
まず、直子が徹夜でリビングを見張った。信治は仕事があるので徹夜出来ず、直子一人だった。眠たさを我慢し見張り続けたが、直子も人間。朝方になって少しトイレにたったのだ。しかしトイレから戻ったところ、それまでになかったDVDがテーブルの上に一枚。
直子は頭を抱えた。
次に実行したのは、カメラを設置することだ。信治がビデオカメラを買ってきて問題のテーブルが映るように背の高いラックの上に設置した。一晩中録画し、朝になって確認してみる。その日もDVDが置かれていて、これで謎が解けると二人して見たのだが問題が起こった。朝方5時ごろ、カメラに五秒ほどノイズが走ったのである。そしてノイズが治まると、テーブルの上にはDVDが置かれていた。
怪奇現象としか言えない事態に、直子は一人で家に残るのが嫌だと声を荒げた。信治はその日会社に休みを入れ、徳の高いと評判の寺の僧に来てもらうことにしたのだった。
午後二時。アパート二階、一番奥の部屋のインターホンを押す人物がいた。
数秒――ドアが開くと、男性が一人。その後ろに不安そうな表情の女性。
「こんにちは、高山さんですね」
「はい。……どうぞ上がってください」
「お邪魔いたします」
訪ねてきた人物は、法衣に身を包んだ僧であった。僧はすぐに部屋には入らず、ゆっくりと玄関を見渡す。
高山信治から既に事情は聞いていた。
「中に……」
「どうぞ、こちらです」
問題のDVDはテーブルの上に全て並べられていた。しかし、僧はそれを見ることなく二人に向き口を開いた。
「大丈夫ですよ。ただの子供のいたずらですよ」
僧の言葉に、二人は小さく声を漏らした。
「子供って私たちに子どもは……」
「えぇ。まぁ、所謂……座敷童ですよ」
「座敷童!?」
「でももう治まるでしょう。明日で」
動揺する直子と信治だったが、僧は「大丈夫です」の一点張りで帰って行った。
――次の日、DVDには「Z」の文字が書かれいつものようにテーブルの上に置かれていた。
そして、僧が口にした通りその日以来この奇妙な現象は起きなくなったのである。
結局、A~ZのDVDはどこから来たのか分からないまま。しかし通常通り録画に使えそうだったので、信治はそのDVDを有効活用している。
―終―
最初のコメントを投稿しよう!