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____「こうして悪い魔法使いは勇者に倒され世界は平和になりました。 おしまい」
「わぁ、勇者さんってすごかったんだね。お母さんまた読んでね」
「はいはい、もう夜遅いから寝ようねー」
「はーい。おやすみなさーい」
「おやすみ」
◇ ◇ ◇
確かに子供のころはファンタジーが好きだった。
いや、それを言うのなら今でも十分にファンタジーなのだが。
いやいや違うそうじゃない勇者が魔王を倒すようなそういうものだ。
絵本の中のような勇者に憧れもした。
だが、現実は甘くはなかった。
◇ ◇ ◇
「おにーちゃん、遅れちゃうよー早く早くー」
遠くから微かに聞こえる声で目を覚ます。
朝だった。清々しい朝だった。枕元の時計を見る。8時だった。確か呼ばれていた時間は8時半集合だった気がする。果たして今から行って間に合うだろうか、否、間に合わせなければいけない。
なぜなら今日は入学する高校の 入 学 式
ぜったいに遅れてはならないんだ。
ムクリと体を起こし伸びをする。
「……着替えるか」
「まさか入学式の日まで寝坊するとはね」
着替えが終わり1階に下りると、母親が怒ったような、呆れたような顔をしてこちらを見ていた。
「眠いんだからしょうがないだろ」
「なんのための目覚まし時計よ」
ごもっともです。
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