追い風1000km

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「けどさ。写真って思ったように撮れないだろ、ゆがんだりはみ出したりぼけたり。そんなら自分の目でたくさん見た方がいいと思うんだけどなあ」 言ってることは同じだがね、と口には出さず、父は首を振る。 「大きい飛行機だよね」背伸びしながら双葉は続けた。 「退役するっていうからさ、どんだけおんぼろなんだよって思ったけど、全然余裕で飛ぶじゃん。なんでおしまいになっちゃうの」 「退役が決まったからだ」 「何で」 「保有する会社の都合だよ」 ぷうと頬を膨らませる子供が納得するはずがない。 「もっとこう、俺でも納得できる材料を提供してくれよ、父ちゃん学者だろ??」 眼鏡の奥から息子を見て。慎一郎は内心で言った。父ちゃん、言うな、と。 「父さんはアナリストではないぞ」 「知ってる」 「結果の検証はするが、未来予測は他の人間の仕事だ」 「わかってる」 「保有する会社が決めたことだ、決定は覆らない」 「それはわかってるけど……」 「双葉、お前は、実際に乗ってみてどう感じた」 「大きくて乗り心地良くてかっこいいなあ、って思った。なくなる理由が理解できない」 「同感だ。まだまだ現役で働ける機体だ、愛好者も多い。母さんは今、何に乗ってるか知っているか」 「えっと、777かな」 「そう。747の三代後の型番だね。航空機に限った話ではないが、全般にコスト減を掲げて改良を加えられる。機体自体の値段が安く、保守にも手間がかからず、人員もさほど必要とせず、安全性が高い。それに加えて燃費が良い機体が求められている」 「ハイブリットカーみたいな?」 「そうだね」 「ジャンボは、燃費が悪いの?」 「今度777を見ておくといい、あちらはエンジンが片側に1つ。ジャンボは2つ。2つと4つでは燃費が桁違いだ。もちろん、騒音も馬鹿にならない」 「けど、機体が大きいならたくさん運べるじゃないか。1回で運べる数が多い方がいいんじゃないの」
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