追い風1000km

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そうなのだ、中学生も半ばとなると子供はとかく親を煙たがるものなのに、実際、双葉はひとり輪から離れる傾向があるように見えて、気がつくと父親の金魚のフンをしていることが多い。 思春期まっただ中の双葉は、彼や父親を良く知る人から顔を合わせる度に「お父さんにそっくりね」と言われるのがいやでいやでたまらないから極力離れようと努力をしているのが伺えるのだが、結局。それが果たされることはない。 ふたりは往路、函館行き853便の搭乗口、58番の前に立っていた。 日曜の午前10時前だ、一般の旅行者が一番出発が集中する時間帯である上に、団体客が多い。季節的に修学旅行生の団体があちこちに見られ、検査場は長蛇の列。なかなか通過できず、搭乗口についた時、出発の20分前を切っていた。 通常ならば、子供連れや介護が必要な人向けの優先搭乗が始まる頃だ。 その後に航空会社が発行する顧客向けマイレージ会員のランク順に搭乗が始まり、アッパークラスの乗客が入り、その後に一般乗客の番が回ってくる。 待たされるのが何より嫌いな双葉は、すでに検査場を抜ける時点で忍耐力の半分以上を使い果たしていた。 きっと優先枠で入れる。いつものことだもの。 ゲートの手前で待つ息子の期待は父にも手に取るようにわかる。 が、今回ばかりは双葉の思惑通りに話は進まない。 仕事柄、国内外へ出かける頻度が一般人より高い父親はヘビーマイラーだ。当然ながら、もう一方の航空会社の方の会員サービスランクは最上級。 慎一郎は出張で、所用で、国内外へ航空機を使って出かける際、まず航空会社が所属するグループを確認する。現在、航空会社は大きく3つのグループにわかれており、日本の航空会社はそれぞれ別のグループに属している。同じグループ内のマイレージ会員であれば、相互にマイルが溜めやすいというだけの区分けだ。普段からマイルやポイントなどを貯めることに興味がない慎一郎も、行き先が決まり、チケットの予約をする際、まずは妻が勤めている航空会社、直行便がなければ乗り継ぎ便、それでも無理な場合は加盟しているグループの便を選ぶ。そこは一応、妻への彼なりの配慮だ。
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