第1章

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 コクラは備え付けのクローゼットからスポーツバッグを取り、少ししわになった紙袋を出した。  コクラは、向かい合ってベッドの端に腰掛けた。  大きな紺のスニーカーが、ブーツの先に触れそうだった。  ベッドの下が、部屋で一番明るいように見えた。 「うまかよ」  差し出された紙袋を覗くと、包装された箱が二つ入っていた。 「大きいのは筑紫餅で小さいのは明太たい」 「ありがとう」  顔を見られずに、肩の辺りに視線をむけた。 「あのお」  コクラが言葉を切ったので、顔をみた。  目が合うと、照れたように笑って首を横に振った。
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