第1章

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 コクラが、縦に三回横に三回コテを入れた。二種類を、二かけずつ小皿に乗せてくれた。 「何件も回るけん、今井さんは少しでよかろうか」 「うん。ええよ」  それから、コクラは人差し指でお好み焼きをなでると、ソースの付いた指をなめた。関節の太く長い指の先をくわえたまま真剣な表情を見せた。 「やっぱ、創業以来継ぎ足し継ぎ足しのソースは深みが違うたい」  頷きながら、笑ったのを見て、ときめいている自分に気づいた。 とにかくよく食べるようだった。 分厚いお好み二枚をほとんど一人で食べて、平気な顔をしていた。
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