第1章

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 花月をなんとか通り越し角を曲がると、ビジネスホテルが見えた。  コクラはフロントで受付をすますと、「ここで待っとって」と言い残し、エレベーターに消えた。 旧式らしく音が大きかった。  薄暗いロビーで黒い革張りのへたったソファに腰掛けた。さっきはどうして赤くなったんだろう。意識しすぎていた自分が、恥ずかしくなった。  コクラはすぐに戻ってきた。 「次は『大阪で一番おいしいたこやきくん』ば、行こう」 そこは花月の裏にあるたこ焼き屋だった。 小さな店の前にはいつも行列がある。 「天かすを、うんとこ入れるけん、外はかりっと、中はトロっとなっとげな」  並んでいる間、コクラはその店のたこ焼きの特徴を話してくれた。
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