第1章

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「ほんまに粉もんが好きなんやな」 「うまいけん、仕方なか」  コクラが笑った。私はなんだかうれしかった。  少しずつ前に進みながら、そのうちコクラのひじが二の腕に当たった。見上げると、目があった。かわいらしい目の下に小さなホクロがある。しばらく見つめ合っていると、コクラはまた赤くなって、目をそらした。  私まで、照れてしまった。  前はカップルで、腕を組んで肩に頭を乗せたり、耳打ちしあったり、いちゃついていた。  いつもなら目障りなのに、今日は少しうらやましく思えた。  焼くのが見えるほど近づくと、コクラは真剣な顔で眺めていた。
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