第1章

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「前にホークスが優勝したときな、福岡も盛り上がったったい。こっちも阪神優勝んときは、すごかったんやなか? 飛び込んだ人おったね」 「いてた、いてた。今は飛び込めんようにしてあるんちゃうかな」  行き交う人混みの流れの中間を、二人で歩いていて気づいた。すれ違う女の子が、コクラを見ていた。優越感を覚えながら、今日だけの限定だと思い出して、軽く落ち込んだ。    会うまでは気が乗らなかったのに、我ながら滑稽だと思う。     商店街を歩いている途中、手と手が当たった。コクラが私の手を掴んだ。少し緩めた後、さらに力が伝わった。  鼓動が早まる。頬が熱くなって、コクラの顔を見られなくなった。  少しだけ近づいて、そっと頭を腕に添えた。
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