第1章

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 なんだかふわふわしていた。 スピーカーから「悪質なキャッチセールスにご注意下さい」と警察署のお知らせが流れていた。  アーケードの天井から、一定の間隔で、えべっさんの絵がぶら下げてあった。ふくよかな笑顔、大きな耳朶、水戸黄門みたいな帽子、打ち出の小槌、 めくってもめくっても同じ恵比寿顔を見ながら、歩いた。  戎橋まで、一言も口をきかなかった。たどり着いた。 「うわあ、巨大蟹! 後、グリコの看板はどこにあっと?」  コクラがはしゃいだ。それから、「デジカメ、ホテルに忘れてもうた」と頭を抱えた。 「スマホで良かったら、撮ったるよ。後で送るし」  バッグの中に手を入れ探り取り出すと、沙耶の携帯電話だった。すぐにバッグに戻し、さらに奥から、自分のスマホを取り出した。
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