第1章

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「土産渡すだけやけん」  コクラが前にまわって、両手をとった。寂しげな目で見つめられ、私は顔を見たままで頷いた。大きな手に手を包まれながら、コクラの泊まるホテルへ向かった。  人混みにはカップルが増えていた。 はたから見れば、私たちもきっと、カップルだった。  だんだんとホテルに近づいていた。  客が入場して静かになった花月からまぶしい光が漏れていた。向かいにある大きな書店の自動扉も発光していた。ホテルのロビーに着くと、手を離した。それから、「部屋にくる?」ときかれた。うつむくようにして、頷いた。
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