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胸がしめつけられた。手で押さえると、鼓動が手のひらに伝わった。耳を澄まさなくても、聞こえそうに激しかった。ホテルの受付の男は、蝶ネクタイを締め、黒いベストを着ていた。鍵を受け取り、二人でエレベーターに乗り込んだ。押した8のボタンが光っているので見ていると、扉が閉じた。直後に激しく揺れた。思わずコクラの袖を掴んで、俯いた。
足下のマットは中心がすり切れて、金属の底が少し見えていた。激しいモーター音に包まれながら、のぼっていった。不規則な振動が続くので怖くて口をつぐんでいた。
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