第1章

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 バッテンが「ええこ」なのは、メールを読めばわかった。 そして、沙耶に想いをよせていることも。 だから余計に、ウソをつくことに抵抗があった。それに、他人の携帯電話を扱うのには、たとえ持ち主に許可を得ていても、抵抗感がある。沙耶の携帯電話を開こうとすると、バネがかたい気がした。 「今井さん? コクラだけど」  想像していたより声が低かったので、焦った。メールを読むときは、勝手に武田鉄矢の声をあてていた。 「あの、今どのへんにいてます?」 「いやあ。看板がゴチャゴチャありすぎてわかりにくかああああ、『ぼてぢゅう総本家』ば見えた」  バッテンがいきなり興奮したので、驚いた。
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