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舜が「そっかぁ」と、どこか安堵したように言った。
私は頷く。
「なら…ちょうどよかったな。俺もさ、そろそろ友達に戻ろうかなって、考えてたから」
舜の声は、少しだけ震えていた。
顔には、いつもと違う笑顔が浮かんでいる。
でも、私は気にならなかった。
「だって、玲也の前で見せる美玖の笑顔見るたびに、苦しかったから」
舜が俯く。
その唇が、僅かに動いたけど、何か言ったのかはわからなかった。
私は財布と出し、テーブルの上にお金を置いた。
「いいよ。俺が払うから」
「ううん。友達に…そんなことさせれない。割り勘で」
私は椅子から立ち上った。
椅子の背に掛けた上着とストールを手に取る。
「ありがとう」
今までありがとう。
私の隣にいてくれて、好きになってくれて、ありがとう。
こんなに好きになったのは、舜が初めてだった。
零れそうになる涙をこらえて、私は店を後にした。
空を見上げると、どんより重そうな雲から、白い物がふわふわ舞い落ちてきた。
くしゃみをし、私は身震いした。
瞼の上に雪が舞い降りた。
体温で解けた雪と、瞼から滲んだ涙が混じる。
「大好きだった」
呟き、私は駅前広場に続く大通りをゆっくり歩いた。
To be continued…
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