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CAがアナウンスをし、それから間もなく、飛行機が動き出した。
「うわ、動き出したぞ!」
「敏感すぎだろ横山」
さっき騒いでいた男子たちの会話がよく聞こえる。
それくらい、機内は静かだ。
舜の方をチラッと見ると、舜はいつもと違うクールな横顔で、窓の外を眺めている。
飛行機が徐々に加速する。
車に乗っているのと同じくらいの体感速度だけど、ふと窓の外を見ると、滑走路の外を走る車が、とてもゆっくり走っているように見えた。
結構、早いんだ。
そう思ったところで、飛行機が減速した。
「何で遅くなるんだよ!?も、もしかして、飛行機の故障とか!?」
さっき横山と呼ばれていた男子が上ずった声で言う。
え?故障?聞いた途端、冷や汗が頬を伝った。
「なぁ、飛行機壊れたのか?湯山ぁ」横山くんが言った。
「いや、そんなんじゃないだろ」
湯山と呼ばれた男子が冷静に答えた。
「でも…」
「そんなビビるなって。離陸なんて、すぐ終わるから。窓の外見たら、景色が斜めってましたーって感じだから」
湯山くんは軽い調子で言う。
さっき舜が言ってたのと同じだ。やっぱ、そんなもんなんだ。
「安心しろよ横山。もし飛行機が墜落したら、死ぬときは全員一緒だ。な?」
横山くんでも湯山くんでもない別の声が言った。
「そ、そうだな…」
横山くんが震える声で返事した時だった。
再び、飛行機が加速し、直後、ゆっくりとカーブした。
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