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24日、午後5時。
約束の時間に、舜は来た。
「体調どう?」
玄関に出ると、舜が私の顔を覗き込む。
私は買ったばかりのストールをかけ直し、
「大丈夫」
と答えた。
笑顔で言いたいけど、昨日のことが引っ掛かって、笑顔が少し強張る。
それを察してか、舜は迷彩柄のダウンジャケットのポケットに両手をしまった。
「行こうか」
今日は、珍しく雪がちらついている。
珍しいといっても、修学旅行の最終日も、少し降っていたんだけれど。
「…少し寒いけど、大丈夫か?」
舜が、少し気まずそうに。
その態度が、なんとなく、昨日の話が嘘なのだという証明に思えた。
「大丈夫…くしゅんっ」
くしゃみが出た。
私は慌てて舜から顔を背ける。
「寒いってのに、マフラーも手袋もしてないのかよ」
舜が呆れたと言いたげに言った。
でも、そう言う舜だって、マフラーも手袋もしていない。
ダウンの上着を羽織っている以外の防寒対策はないように見える。
「首元がそんな開いてるのは一番ダメだろ。また風邪引くぞ」
「しゅ、舜だって、マフラーと手袋してないじゃない」
私が言った途端、舜がポケットから右手を出した。
そして、私の左手をパッと掴む。
「男は別にいーんだよ!」
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