【霧・摩・影・變】シリーズ /  第一話 【腐霧】

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久江と目が合う…いや狙っていたに違いない 「ごめんなさいね、朝から騒がしくて ウチの亭主ったらさ」 亭主の愚痴を聞かされるのは御免だ、適当にあしらって部屋へ戻る 布団に潜り込み 昨晩のコンパを思い出す… (あぁあの梨花ちゃんて娘、可愛かったな…スタイルもいいし あんな彼女が欲しいなぁ…) (俺には無理だよな…でもどこかの男はあんな可愛いこと いいコトしてんだよな くそ!寝よ!) 小学校ではリトルリーグ、中学高校では野球部だった、野球部の練習は、1年360日間 正月3日、盆1日、顧問の先生の結婚記念日1日、それ以外は休みなく練習だった 彼女など作る時間はない 高校を卒業して 青春の時間を取り戻そうと 期待に夢を膨らまし 東京に出た ところが、就職した会社に勤めて1年くらいした時に 辞令で地方都市の支社に 行くことになってしまい現在に至る まともに彼女を持ったことがない、 それでも東京では 同僚の彼女の紹介で 一応、女の子と付き合うことになったこともある…が デートの帰り、薄暗い公園を歩いていて キスを迫った 平手打ちをくらった、走り去る彼女 それ以来電話も出てくれなくなり事実上フラれた (俺はきっとこのままここで朽ち果てていくんだ) コンパが不発に終わるたびそう思って2、3日は落ち込む 眠った… 高校の野球部時代の夢を、好きだったマネージャーのさおりちゃんから告白されて 部室でキスをしようと唇を寄せた時、吐き気で急に目が醒めた 「なんだよ!くそ!いいところで!」 こみ上げる吐き気、口を押さえてトイレに走る…」
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