【霧・摩・影・變】シリーズ /  第一話 【腐霧】

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須崎の妻の久江が オロオロしながら言う 「ガスかしら? 毒ガス? 戦争なの? なんかの事故? 特殊なガスが漏れたとか?」 ハッとした顔で高野が言う「もしかして 水も電気も止まってるのは…」 「お前のとこもか、みんなだよ 電話も繋がらない」田村が答えた 「テレビもつかねぇし、ラジオも雑音だけだ 他の部屋は誰か居るのか?」 「102の吉村くんは 図書館に行くって…自転車はないな…まだ帰ってないんだ」 いつも ドアの横に置いてある 吉村の自転車は見当たらなかった 「芦屋さんと、りえさんは寝てると思います」 「じゃあ 郵便局のオネェちゃんとこは? 誰か知ってるか?」皆首を振る 「ちょっと見てくるわね」 久江が足早に階段を上り 202号室の呼び鈴を鳴らすが 何度鳴らしても応答はない ドアノブを回してみた 「鍵が開いてるわ!」久江が 手すりから下を見て オロオロしている 「部屋の中を見てみろよ! 女の人の部屋だ、俺達よりあんたのがいいだろう」 田村が大きな声で言う 「ええ!わたし?」 「早くしろって!」急かす
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