第1章「ムシの良過ぎる男」

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 王塚製薬の部署は大きく三つに分かれていた。  研究・開発部。  知的財産部を含む総務  そして営業である。  エリート揃いの本社でも落ち零れはいるものであった。 「ほんっと使えねぇな!オマエは!」  と上司に罵られ、冴えない男が丸めたカタログで頭を叩かれていた。  彼は面長な顔に投げつけられたかのような大きな団子鼻をつけていた。毛穴は大きく開き、ノミのように小さな斑点がブツブツとついていた。  営業部らしく髪型はさっぱりとしていたが、髪の中に白いものが一房二房束になって表れている。  目は印象の悪い三白眼。それをさらに黒ぶちのメガネが増長させていた。  女性どころか、同性の同僚にさえ生理的に嫌われる顔である。必然、客受けも悪く、上司の受けも悪かった。 「クソ虫がっ!」
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