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これはまだ、私が小学生だった頃。
何も考えずにひたすら走っていた。
私の長い髪が風に靡いて小さく揺れる。
「美桜ちゃーん!待ってよーー!!」
後ろから私の名前を叫びながら、息を切らして必死に走ってくるのは、幼なじみの奏多くんだ。
私の名前は椎名 美桜(しいな みお)。
元気だけが取り柄で、それ以外はごく普通の女の子。
私の幼なじみの宮野 奏多(みやの かなた)くんは、近所に住む同い年の男の子。
私より背が低くて、栗色のストレートヘアに二重瞼で羨ましいくらいのクリクリとした大きな目。
可愛い顔立ちをしてるせいかよく女の子に間違われてる。
それが奏多くんにとってコンプレックスらしいけど、私からすれば男の子なのに泣き虫な事が一番のコンプレックスだと思う。
同級生の男の子からイジメられて、いつも私が助けているうちに奏多くんは、私の傍を離れなくなった。
「奏多くん、おーそーいっ!!」
「……うわぁっ!!」
私が急かすと、石につまずいたのか奏多くんは、前から倒れ込むように転ぶ。
「…奏多くん、大丈夫?」
奏多くんに近寄り、私は手を差し伸べるけど、奏多くんはなかなか顔を上げようとしない。
「……また、泣いてるの?」
小さく鼻をすする音が聞こえて、私は呆れてため息をついた。
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