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「……ほら、早く立って」
「…足が痛くて立てないよぉ……」
痛みに耐え切れなくなったのか、ついに奏多くんは泣き出してしまった。
すれ違う人が白い目で見てくるけど、奏多くんが泣いたのは私のせいじゃない。
日常茶飯事になったこの光景にも今は慣れて、私は奏多くんの前にしゃがんだ。
「奏多くん泣かないで。男の子でしょ」
奏多くんは同い年なのに、何だか私には手のかかる“弟”に思える。
「奏多くんは本当に、私がいないと何も出来ないんだから…」
私は、奏多くんの頭を優しく撫でた。
そうすると決まって奏多くんは笑顔を見せるって事…私はよく知ってる。
「…奏多くん、私が支えてあげるから立てるよね?」
「…うん、美桜ちゃんがいるなら大丈夫っ!」
私は奏多くんの片腕を自分に回させて、ゆっくり立ち上がると奏多くんの洋服が泥だらけになっているのに気づく。
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