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「…奏多くん、泥だらけだよ」
私が笑いながら汚れた洋服を指差すと、奏多くんは恥ずかしそうに下を向いた。
「…美桜ちゃん、あんまり見ないで」
「どうして?」
「…だって僕、今すごくカッコ悪いから……」
「何言ってるの?…変な奏多くん」
私はそう言って笑い飛ばすと、今度は不機嫌そうに奏多くんは黙り込む。
奏多くんの両膝を見てみると、擦りむいたのか血が出ていた。
「もうすぐ奏多くんのお家に着くから、桃子(ももこ)おばさんに着替えの用意と、傷の手当てしてもらってね」
「……わかってるよ」
心配してあげてるのに…何よ、その態度。
また奏多くんに泣かれるのが嫌で、すぐそばまで出かかった言葉を飲み込んだ。
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