6.ツンツンリーマンの恋人。

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  会議室を出た後、私はすぐにトイレに行ってバシャバシャと手を洗っていた。 田仲さんには悪気とか変なつもりとかはなかったのかもしれないけど、一度ダメだと思ってしまうと、気持ち悪さだけが残ってしまう。 ……いけない、いけない。 自意識過剰だ、きっと。 もう忘れよう。 ハンカチで手を拭きながら、そう言い聞かせる。 よし、と気を引き締めてトイレを出てオフィスに戻る途中、喫煙室の前でばったり部長に出くわした。 「あっ、お疲れ様です」 「お疲れ」 「あの、部長。田仲さんはいいんですか?」 つい10分前にバトンタッチしたばかりなのに、何で部長がここにいるのかと疑問に思う。 何か資料でも取りに行くとかだろうか? 「あの後すぐ喜多村が来たから出てきたんだ。俺もお役御免ってやつだ」 「あ、そうだったんですね。喜多村さんが来たならもう大丈夫ですね。田仲さん、怒ってる様子もなかったし、良かったです」 理由があるとは言っても、時間に遅れたのは事実だし、時計メーカーの社員としてはやっぱり良くないことだろう。 田仲さんが怒るような人じゃなくて良かったと思う。 ……触られたことは嫌だったけど。 って、もう思い出さないって決めたのに! 忘れろ、私!  
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